朝、少し心が重い日でした。
それでも空間のことを考え、言葉を紡いでいるうちに、
私は静かに自分を取り戻していました。
私は、空間を整えることが好きです。
それは仕事だからではなく、もっとずっと前から、
私の中に流れている感覚だからだと思います。
私の祖母は明治生まれでした。
そしてその父、つまり私の曾祖父は、
文明開化の時代に舶来物を扱う商いをしていました。
まだ西洋文化が珍しく、
海外から届く品々が“未来”そのものだった時代。
その空気の中で育った祖母の感性は、
流行を追うものではなく、
本物を見極める確かな目を持っていました。
アメリカで暮らしていた祖母の家は、
暮らしそのものがデザインでした。
光の入り方、家具の配置、
さりげなく置かれた小物の美しさ。
空間は、言葉以上に心を語る。
私は子供の頃から、それを自然に学びました。
そして幼い頃から、
「自分のルーツに誇りを持ちなさい」と教えられて育ちました。
父が生まれた家には、
テニスコートや築山があり、
豊かな庭と文化の香りがあったと聞いています。
けれどその家は、戦争で消滅しました。
形あるものは失われても、
受け継がれる感性や誇りは消えません。
私は思うのです。
もしかすると私は、
失われた空間の記憶を、
別のかたちで再生し続けているのかもしれない、と。
アパレルの空間ディスプレイ。
オーダー家具の提案、リフォーム。
経営するカフェで扱った輸入小物。
別荘の再生や家具提案。
そして今のリフォーム。
それは単なる工事ではなく、
暮らしの再編集。
空間は、人の心を整え、
誇りを思い出させる力を持っています。
私の仕事は、
空間を通して、その人らしい物語を紡ぐこと。
それは、私自身の原点と、
深く静かにつながっています。
彩TotalHomeStation
木村 昌代
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